さて、本日は大瓶水指(おおかめみずさし)のお話しをしたいと思います。
千家の10代家元吸江斎が、紀州徳川家の徳川治宝公より、瀬戸染付の大きな瓶を拝領しかことにより始まります。
千家では、その瓶を水瓶としては使わず、珍重し茶席にて「水指」として用いました。
水指の事とて蓋がいります。蓋は丁度良い大きさの丸いお盆をひっくり返し蓋と致し、これを「盆蓋」と申します。
拝領した有難い瓶だけに、千家ではこの大瓶水指を大板に乗せて使います。
私達が大瓶を適宜に盆蓋で水指に使う場合は、大板に乗せずともよし。との教えもあります。
私は、いつかはこの大瓶水指を自身でも使いたい!とかなり昔から念じておりました。
しかし、有り合わせの「なんちゃって」でするのは嫌いです。
「見立て」と言う都合の良い言葉を悪用し、実際の水屋瓶など用いたりなど「なんちゃって」で子供騙しの道具で色々とお稽古されている先生がたまにいらっしゃいますが、道具の次第や意味を教えるのも先生の大切な仕事なので、ただお点前のやり方だけ教える為のお稽古はいただけません
(また、お話が少し脱線しました。すみません^_^!)
本物の瀬戸染付か、それに値するくらいの瓶がほしいな。と思っておりましたら、
先日の私の茶歴50周年の記念茶会の祝いに。と、名古屋の古橋尚かんがご自分のコレクションの中からこの瓶を私に下さいました。
この瓶は、千家に伝来するのと同じくらい歴史のあるもので、江戸の終わりに尾張徳川家の御庭焼で作られた物か、明治の作としても、明治のかなり早い時期の物だそうです。
お茶会の翌日、早速、直径9寸の山道盆を蓋にしたところこれまたピッタリ。
本当に感謝です。
このブログでも度々お名前を出させて頂きます古橋尚さんは、名古屋で活躍されている陶芸家でもあり、古美術収集家でもあり、また、古美術評論家でもあり、沢山の美術雑誌のコラムを書いたりもされておられます。
もちろん、私は千家の教えに従って、大板は敷かずこの瓶を使います。
千家ではこの大板水指を、いつも春の盛りのこの時期に使います。
雪解けの水が満々と豊に湛えるさまを瓶に託しての事だそうです。
「水」は本来冷たさや涼しを感じさせるものながら、この時期の瓶に湛える水をみていたら、何故か「暖かさ」を感じます。
まさに、春の「水温む」(みずぬるむ)を拝領水瓶で見事に表現された先人の宗匠は素晴らしいと思います。
お茶の道具やその設え方、組み合わせ方には、深い意味や沢山の答えがあります。
お点前を通して、そんな事を教えて行きたいと思います。
堂後茶道教室http://www.dogo-sado.jpn.org
【日記の最新記事】